9月最後の日は日曜日。
友だちの知人の合唱団の演奏会へ。
山田耕作の歌もあれば、モーツアルトのミサ曲も。
日本の歌もいいなあ~、とほっこり。
帰りに美味しいケーキやさんに寄る。
カバンの中には9月30日消印有効締切りの原稿。
前回の6月末の締切り日。
あの一分一秒を争った郵便局での悪夢を繰り返さないため、
校正も規定枚数も封筒の宛名書きもすでにばっちり。
あとは出すだけ・・・。
締切日に予定を入れたのも余裕を持って提出するため。
当日にばたばたしないように。その判断は正しかったようだ。
ドリンクお代わり自由のケーキ屋さんでコーヒー2杯、紅茶。
気持ちも軽く美味しくいただく。
今回はとある地方新聞社主催の短編。
私が一番の目標にしている文学賞で今年が三回目の応募となる。
まあ、そんだけ落ちてるってことです・・・。
規定枚数は30枚。「以内」「程度」という単語がつかない枚数規定は珍しい。
はじめて応募したときは「30枚以内(ただしちょうどが望ましい)」だった。
今年はそのカッコ書きが外れていた。
30~50枚の短・中編を書く時はだいたい倍の枚数を書いてから削っていく。
最終的には80枚くらいからいらない場面、描写、会話を削った。
40枚に落ち着いてしまった。
そこから10枚を削るのが苦しかった。結局、登場人物を一人外した。
30枚ジャスト。校正も終えた原稿をメモリスティックに入れて
今日は爽やかに家を出た。ちょっと眠いけど。
あとは出すだけ、といいながら表書きした角2封筒の中は空っぽだ。
あとは出力するだけってのが正しい状況説明。
家のプリンタがあまり良くないので、演奏会の帰りに大阪にでて
キンコーズで出力&24時間空いている中央郵便局で消印もらおう!
いう流れは今日も同じ。それ自体がもう学習能力なしだよな・・・。
友だちが途中まで車で送ってくれて(ありがとう!)
19時半に中央郵便局に一番近いキンコーズで出力を終えた。
「今回は余裕だなあ~」なんてちょっと一息。ネットでブログやニュースを読む。
封筒に原稿を入れようとしたけれど、出力状態を最終チェック。
あ、縦書きダーシが文字化けしてる。
このアルファベットも横むいてるやん。
あれ、禁則処理ここ効いてへん?
なんでここの会話だけ関西弁?
まだ時間があるからもう一回出力し直そう・・・
ってことで張り切って赤ペンを取り出す。
あんだけケーキ屋さんで飲んだのに、喉がからからに。
20時15分か。
校正の時間代がもったいないし一旦清算して出よ。
それでちょっとなんか飲みながら落ち着いてチェックしよ。
寒っ。長袖を着てても外は肌寒かった。
キンコーズを出ると隣はすぐ中央郵便局、集配車の出入口。
脚立にのった男性職員二人が門で大きいな白いシールをはがしている。
「JP 日本郵政」のオレンジロゴが出てきた。
お~!ついに明日から民営化か~、期待してるし。
守衛さんのいる職員で出入り口には「民営まであと○日」の貼り紙。
「1」の数字が張られている。これもあと何時間後には外されるはず。
今日は窓口でもらった領収書を記念にとっておこう♪
なんて調子こいて正面玄関へ――って暗っ。
え?なんで暗いの。しかもなんか人が貼り紙にたかってる。
「民営化準備のため郵便の窓口を休止・・・」
はあ~っっ?? え~っっ!!
しまった。やってもた。
隣の男性も大きな封筒を抱えうろうろ。
何通も束ねて持ってる女性は携帯片手におろおろ。
今日に限って北新地から梅田に入ったから気がつかへんかった!
くそ~民営化なんて嫌いだ、民営化なんてせんでいい。
裏へ来た道を猛ダッシュ!脚立をかついださっきの職員二人に泣きつく。
「今日の消印もらえないんですか~っ??」
おじさんがにっこり笑ってくれた。
「大丈夫ですよ。そこのポストに入れれば1時間ごとに集配してるから」
ほう~ 良かった~。
「24時までにいれたら今日の消印もらえるんですね?」
「集配時間が書いてあるし、それ見てごらん」
脚立からおじさんが降りてきてくれた。ポストに小さな紙が張ってある。
「ありがとうございます・・・って20時30分のあと空白ですけどっ」
おじさんが腕時計を見る。
「まだ20分や。ラッキーやね。今入れたら間にあうよ」
とにっこりと私が手にする角2封筒をさす。
こんな赤字入った原稿出せません~っ。
50メートルダッシュでキンコーズに戻る。
出力し直して、パンチで穴あけて、原稿紐で綴じて・・・
50メートルダッシュでポストに戻る。
ジャスト30分、まだ集配の人いないし。
「間に合った~って 切手貼ってないし!」
ポストの横の切手の自販機・・・ってとっくに撤去されてるし。
裏口へまたダッシュ。
「切手~、切手売ってないですか」
「ごめんな。ほんまごめんな。いま局内では無理やねん」
すでに何人もに答えてるようでやけに優しく謝ってくれた。
そこへまたさっきの脚立の二人組。
手にシールを丸めた大きなゴミを抱えている。ほんとに泣きつく。
「切手が、切手が・・・コンビニ・・・一番近いとこ」
おじさんと若手が顔をあわせるておたおた。
「・・・やっぱり桜橋の交差点ですか、地下ですか?」
「あ、交差点いくまでに新らしのできてる、そこ100%売ってる」
おじさんが横の横断歩道をそら行けっ、とふさがっが両手の代わりに首を振る。
「でももう30分すぎてる~」
「このポストの集配、きっと最後やから走ったら間に合うかもしれん」
「う~、ありがとうございますっ」
100メートル猛ダッシュ。でも近い。新しいコンビニありがとう!
「120円切手ください!」
あ、一応速達にしようか。
「やっぱり120円と270切手ください」
レジの若いお姉さんは電卓を打ちつつ、
50円切ってを丁寧にぴりぴりはがしてる?
クリアファイルを勝手にめくる、50円と80円しかない。
「あの、その50円の4枚だけでいいです・・・」
ヘロヘロダッシュ。赤信号で足ぶみ。
横断歩道の向こうのポストに人影が~。
青いコンテナに袋が山盛り。職員二人がサンタ状態で引いている。
「ちょっと待って~」切手を舐めつつ横断歩道を走る。
私が歩道を渡りきる前にすでに別のおばちゃんが止めていた。
他にも二人ほど正面玄関から走ってきた。
その合間にコンテナの横で切手を舐めまくる。
舌からからやん。4枚も連続で舐れん。
「あの、ゆっくりでいいですよ」
かなり大きな郵便のソリを引いてたのは細い女性二人だった。
その言葉に泣けてくる。
裏口に一緒に歩きながら切手を貼り終え、ようやく封筒を渡す。
女性がちょっと手で重さを確かめる。
「あの、50g超えてないと思うし、超えてても200円分貼ってるで大丈夫ですよね」
その仕草に急に不安になった。どう考えても100g超えてはないはず。
「5分待ってもらえたら、念のため計ってきますよ」
私を守衛室前に案内し、職員さんが階段を走って登り、また駆け下りてくる。
「重量は大丈夫でした。今日の消印で必ず処理します」
「ほんとにありがとうございます」
「いえ、こちらこそお待たせして申し訳ありませんでした」
さっきの守衛さんもにっこり。
女性職員さんも、守衛さんも、ほんとにありがとうございました。
お礼を言いたくて脚立のお二人を探したけれど
看板類はすっかりレンジの新しい「JP」ロゴに代わっていた。
民営化しても頑張ってください。そしてこれからもよろしく。
う~舌がのりまずい。
もう本当に二度と締切り当日出しはしません。
――反省と感謝の気持ちを込めて。