去年の夏の終わりに今の職場にきて
ずっと仕事の中心だった成果物が今日納品された。
800頁ほどの学術書。
一般に流通することはまずないだろうけど、
ISBNがついた出版物に携わることができたのははじめて。
京都の出版社から納品された書籍の山。
積み終わると、思わず席を立って近づく。
「おつかれさま」
茶色の梱包紙を外した課長さんが一冊手渡してくれた。
レザックの表紙をさわさわ。
スミ一色刷りの中を広げてくんくん。
「また嗅いでるよ」と笑われる。
背の丸みの感触を何度も楽しむ。
へへ、嬉しいな。
所長よりも職員よりも派遣三人が一番喜ぶ。
遡れば大正時代から、今の形での発刊は昭和8年から。
毎年一冊、ずっとずっと戦時中の休刊をのぞいて刊行され続けていたけれど、
それも今年で最後。
すでに運用されているデータベースへ完全移行する。
最後の版の発行に少しでもお手伝いができて良かった。
縦組み文字だけの書籍。
しかも指定は「ゴチ」と「ミン」だけ。
しかも組版。
DTPに慣れきって、モリサワフォントに慣れきって、
再び「ゴチ13Q」なんて指定すると思わなかった。
組版と再会するとは思わなかった。
箱でドカンと送られてくる校正紙の山。
課長さんはそのたびに悲鳴をあげていたけれど、
校正が楽しかったし、なぜだか校正がしやすかった。
初校、再校、青焼き。旧漢字や作字文字。
漢字とひらがなのバランスってこんなだったよな。
やっぱり縦組みってええな。
漢字ってほんまキレイだな・・・。
刷り上ったぶっとい書籍をパソコンの横に立てて、
今年度版のデータベースづくりの詰めに勤しむ。
書籍編集の労力は大きかったので、
もしかしてこれで派遣はお役ご免になるかと心配したけど
過去の書籍からデータをひろっての遡及版データベースづくり、
英語、一部中国語、ハングルなど国際版対応の準備など
もうしばらくは仕事がありそうだ。
でももう二度とあの電算写植のゲラの山と格闘することが
出来ないんだと思うとちょっと淋しい。
判子箱にある「ゴチ13Q」 「ミン11Q」の判子、
用なしで捨てられるんだったら欲しいな。
納品も無事にすんで、黄金週がはじまる!