指揮棒がすっと振り下ろされて
なんのためらいもなく一斉に、
でもなんとなく探りあうように管・弦・打が一斉に響きあう。
あの緊張感、不安定感いっぱいの序奏がたまらなく好き。
ティンパニーの不思議な拍の連打にぎゅーっとくる。
ブラームス 交響曲 第1番。
待ちに待った金聖響のブラームス・チクルスの第一弾だ。
聖響氏もブログで「待ちに待った」と書いていたけど、本当に渾身のブラームス。
今日は今まで見た中で一番「ほどよく熱い」振りだった。
古典派、モーツアルトに続く金聖響の年4回シリーズ。
今回、ブラームスで組むのはオーケストラ・アンサンブル金沢とは
べートーヴェンの交響曲の収録をずっとやっている名コンビ。
指揮者とオケの一体感というか信頼感が気持ちよかった。
昨日まで金沢で詰めていたようだ。
なんとも胸を締め付けられる和音に
心拍数を嫌でも上げられるティンパニー。
静かに激しい、どうにもこうにもせつなくなる第一楽章を終わると
指揮者は珍しく汗びっしょりのよう。楽団員たちも一呼吸。
客席も緊張感がとれて咳ゴホゴホ、腰もぞもぞ。
いつもよりちょっと長めの間をおいて2楽章へ。
ちょっとほっこりうっとりできるメロディで一呼吸。
オーボエとクラリネットの美しいリレーのあとの
外国からの客演かな?2楽章を締めくくるコンサートマスターのソロ部分。
ピアニッシモでも他の音に消えることなく浮かび響いて素晴らしかった。
コンマスが弦をおろし指揮者も棒をおろすと二人で「よっしゃ」と目で握手してた。
同時に客席一斉に咳払い。
コンマスのソロパートを邪魔しちゃいけないと我慢がとけた。
少し客席がゆるんだまま指揮棒があげられた。
クラリネットの若い女性奏者は感情豊かに主旋律を奏でて
一番短い3楽章の最後の一音を消えても指揮者は音を離さずに、
客席の誰一人咳払いをさせないタイミングで最終楽章の一音に指揮棒をおろした。
そこからは一気に。ティンパニーがテンションをあげる。
でも弦管の響きあいはなんでかやっぱり切ない。
この曲は生で聴くのははじめて。
最終楽章はもっと「歓喜」な感じでデジタル音を聞いていた。
今日は最後まで張り詰めてちょっと解いて、でも切なさいっぱい。
なんかぶわっと溢れそうで一滴もこぼさない絶妙なバランスが快感。
今まで聞いた演奏の中でも特に良かった。堪能。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
4月22日(日) 15:00~ ザ・シンフォニーホール
指揮/金聖響 管弦楽/オーケストラ・アンサンブル金沢
ヴァイオリン独奏/シュロモ・ミンツ
ヨハネス・ブラームス
♪大学祝典序曲 作品80
♪ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
♪交響曲 第1番 ハ短調 作品68