前職の後輩と食事して、お酒をのんで、ケーキを食べた。
彼女は私が辞めるときの新入社員で、研修が終わってから
私と入れ替わりのタイミングで同じチームに配属された。
今は私が担当していた仕事を私の後任からさらに引き継いでいる。
彼女とは研修中にひと月ほど一緒の部署で働いた。
何度か電話やメールをもらったり、飲み会でも毎回一緒だったけど、
二人で会ってゆっくり話しをするのは初めて。
お誘いのメールがきた時はちょっと心配をしたけれど、
今日は顔色も表情も今月はじめに会ったときよりも明るくてホッとした。
少しだけ「抜けた」ようだ。
ちょうど入社してもうすぐ丸一年。ずいぶんと濃い一年だったと苦く笑うが
本当にそうだったと思う・・・。
いろんな話をしながら、自分の社会人人生も振り返ってしまった。
私もこの会社での三年間は濃かった。
最初にこてんぱに否定され、突き落とされた。
初日、三日目、一月目、試用期間中全ての面談日に
「辞めさせてください」と頭を下げた。
いろんな事情で辞め損ねて3年いたけど、どん底からのスタートだった分、
這い上がったなあ、という実感を得られた。関係を築く難しさも喜びも。
本当に貴重な経験をさせてもらったと思う。
へこんだ分、嬉しこともたくさんあり、
辞めるときにはずいぶんとプラスになっていた。
プライベートでショックなことがあり、家族と自分の人生を思い直した。
結果的に仕事との付き合い方も変わった。
途中で新卒で入社した会社の同期から電話が入る。
店を出て、最終電車を待つホームで彼女と話をする。
東京でがんばっている彼女が休暇でこちらに帰ってくる。
私が苦しい時にずいぶんと助けてもらった。
なかなかご恩返しはできないけど。
この会社での七年間はなかなか言葉ではあらわせない想いがある。
電話を切って最終電車に乗る。
ふと、気がつけば斜め前に店長が眠っていた。
前職の前に三年間お世話になった料亭の5人の店長のひとり。
ほんも少し前のようで、もうそこを辞めてから4年もたっている。
本店、支店をいろいろとまわったけれど、個性的な店長たちの中で
この一番穏やかで物静かな店長とだけは一緒のお店では働けなかった。
応援に行った時には忙しいのに丁寧に仕事を教えてくれた。
長い菜箸でちょちょっと小鉢に盛り付ける仕草がとても綺麗だった。
立地上、土曜日は暇な日が多いけど、終電に乗っているところをみると
平日並みにお客さんが入ったのかな。今は本店の店長さんだったけな、
なんて、気持ちよさそげに頭を垂れている店長をみながら、
いろいろと懐かしく思い出しつつ私も眠ってしまった。
ぽんっと膝の上の鞄をたたかれた。
目をあけるともう扉のほうへ小走りの店長が「なっちゃん!」と手を振って笑ってた。
私も扉がしまった向こうの店長に両手を大きく振った。
別の名前を持ったここでの三年間は、
忘れていたことを思い出し、新しいことを得られた大切な日々だった。
自分は自分だけど、なんだか三社三様の自分がいる気がする。
これから何年生きるのかわからないけれど、
これからの自分には必要な経験をそれぞれでさせてもらったと改めて感謝をする。