★聖響/モーツァルト<アマデウス 苦悩、そして光>
・ピアノと管弦楽ためのロンド ニ長調 K.382
・ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調「戴冠式」K.537
・セレナード 第13番 ト長調「アイネ・クライネ・ナハトジーク」K.525
・交響曲 第38番 ニ長調「プラハ」 K.504
指揮:金 聖響 管弦楽:大阪センチュリー交響楽団 ピアノ:三輪 郁
2006.10.15 ザ・シンフォニーホール
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2006年の聖響シリーズはオールモーツァルトプログラム。
年代順に追うプログラムの三回目となる今回は、
失意のパリ旅行、ミュンヘンを経て、ザルツブルグへ帰郷後、
ウィーンへ定住し、結婚した26才から31才頃の作品からの構成だった。
昨年の「古典派」でのバッハやベートーヴェンが良かったので、
今年はシリーズ4公演の年間チケットを買った。
席も共通なので、買う時にはどこにしようか迷いつつ、
ステージの右上にある二階RC席にした。
指揮者の顔と手の動きが良くみえ、コンサートマスターの顔が正面になる。
指揮台の総譜やヴァイオリンやヴィオラの楽譜も見えて楽しい。
「アイネ〜」の指揮では指揮棒は使われなかった。
聖響さんの手だけの指揮がたまらなく好きだ。
「アイネ〜」の聖響さんの指揮を見ていると、
指先から全ての音が出ているぐらいに感じられる。
私は音楽を聴く耳があまりよくないので、
視覚に助けてもらいながら聴く方が音をより楽しめる気がする。
指揮者の背中や指先の動き、弦楽器のボーイング。
音をあんまり聞き分けられない楽器たちも、
演奏者の動きを一緒なら音が入ってくる。
目を瞑ったり、開けたり、
全体みたり、指揮者の指先だけみたり・・・
このステージの後ろでなく、上にある席に座る時は
特にいろいろと楽しめる。
そういえば、「あ」の口をしている映像をみながら「お」の音を流すと、
「お」の音を聞きとれない実験があった。
私も聞き取れなかった。目をつぶると「お」になった。
目を開けると「あ」のような「う」のような音になった。
人間は音も「耳」の器官だけを使って認識しているわけでないと
実感させられた瞬間だった。
これまたそういえば、何かの本にモーツァルトは音楽を映像でとらえていて、
それを楽譜に落としていたからあれだけの量の作品を残していたという話しがあった。
絶対音感の映像版のような能力らしい。
話を戻して・・・
今年の聖響シリーズで組んでいる大阪センチュリーのコンマスは
まだ若くて、でも存在感あってちょっと丸い。
演奏前はわりと無表情でむっつりとしているけれど、
演奏中の表情の豊かさはぴかいち。特に前半のハ長調の明るい曲での
幸せそうな顔、緊張感のある顔も嫌みでなく、自然な百面相。
指揮者と交わすアイコンタクトも見ていてなんだかほっこりとする。
「アイネ〜」の二楽章が終わり、三楽章の第一音へ指揮を振りおろす直前に、
客席からアラーム音が三回鳴った。音が出る本当に直前だったので
会場に緊張が走ったけれど、聖響さんはふっと表情を緩めて腕をすっとおろし、
同時にコンマスが弦に置いた弓をふわっと外し、みなが短く一呼吸入れた。
コンマスと短く笑顔を交わした指揮者がもう一度腕を上げて三楽章が始まったが、
それらはほんの一瞬の間合いだった。すごく絶妙な間合いだった。
「アイネ〜」の第一楽章は小学校の給食の時間に流されていた音楽だったから、
CDで聴くといつも給食の匂いが邪魔して楽しめないけれど、
今日はさすがに全く「給食」は出てこなかった。
協奏曲も「アイネ〜」もとても良かったけれど、「プラハ」が一番好きだった。
そしてここでもちょっといつもにはないことが起こった。
第二楽章に入り会場全体がぎゅーっと集中していたその時に、
「かつーん」とボールペンが転がるような音がした。
また会場の集中が揺るんだ感じになりつつも、何事もなく演奏が続く中、
ヴィオラ奏者の一人が席から腰をあげて何かを拾った。
そして指揮者の動きを止めずに指揮者が飛ばした指揮棒を、
すっと指揮者の指にもどした。
聖響さんはいつもの関西弁で「すんません」と目で謝っているような顔をして、
少し頭を掻いて最終楽章へと入った。
次の11月26日が今シリーズの最終回で、交響曲を39、40、41番を続けてやる。
すごく楽しみだ。この日は2007年のシリーズ公演の発売日。来年はブラームス。
楽屋口で男性ファンから「ベートーヴェンは次いつやるの?」と聞かれ、
「やりたいんすけどね、しばらく予定ないんですよ。来年はブラームスやります」と。
ベートーヴェンでよく組んで録音も多くされているオーケストラ・アンサンブル金沢
との4回シリーズ。これまた楽しみだけど、発売日までにお財布と相談。
もうちょっと働こう・・・。
とりあえず、新春の「新世界」のチケットを購入。
C・Dは売り切れ、B席の最後の一枚。
今年も聖響さんの「新世界」でスタートした。
まだまだ年末にかけて楽しみなプログラムがたくさんある。
来週は中国のピアニスト ラン・ランが近くにくる。
しかも大きなホールでの演奏会の前日にとある音楽店の店内でも演奏を披露する。
手を伸ばせば届くぐらいの距離でラン・ランの演奏が聴ける・・・。
時々、ピアノの蓋を開けてしまう。
やっぱり聴くだけでなく、自分でも音を出してみたい今日このごろ。