日経新聞の「私の履歴書」。
今月は物理学者の江崎玲於奈氏だ。
まだ少年時代からようやく大学生になったあたり、
正月から毎朝(夜)楽しみに読んでいる。
何が興味をそそられのかわからないけれど。
江崎氏が何を発明してノーベル賞を授与されたのかはよく知らない。
「半導体におけるトンネル効果の実験的発見」が受賞理由らしい。
さっぱりわからない。
江崎玲於奈氏ご本人はあまり知らないけれど、
なんとなくお名前だけはここ何年か身近にあった。
ナノテク分野で顕著の業績をあげた研究者に贈られる「江崎玲於奈賞」。
以前の仕事でナノテクの特集をした時にこの賞を知った。
「玲於奈」の名前がフラーレンの構造図とイメージが絡まって、
なんだかとても美しい響きで心に残った。
その翌年、再生医療の特集をした時に
第三回の受賞者である岡野光夫教授を知った。
岡野教授が研究を進める「細胞シート工学」はすでに
角膜再生で大きな成果をあげている・・・ということだ。
皮膚や臓器への再生医療への応用が期待されている。
岡野教授と共同研究もされている大阪大学の教授への取材で
この細胞シートの映像を見せていただいた。
手のひら大のシャーレの上で鼓動するシート。
分厚く重ねられたオブラートような小さなシートが脈打つ。
その鼓動はまさしく人間の鼓動で、「生」を感じた。
シャーレの中で鼓動していたのは「生きた心筋シート」だった。
正直言って衝撃を受けた。
言葉にできない、それは希望のような不安のような・・・。
その教授は言った。
「再生医療や未来医療は不老不死を目指すものじゃない。
限りある生命を大事に生きるためのもの。
本来人間が持っている『自ら治る力』を活かすんです」と。
「医事は自然に如かず」
最先端の医療の現場で教授が口にした
杉田玄白の言葉が新鮮だった。